梶井基次郎選手権!~表現力を磨く~(6年現代文)
6年生進学クラス。梶井基次郎の『檸檬』という小説を読解中。
主人公の「私」が果物屋さんで檸檬を買うシーンには、檸檬の素敵な描写がいっぱい。
梶井基次郎は、檸檬という一つの果実を、こんなふうに書いています。
・レモンイエロウの絵の具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色
・あの丈の詰まった紡錘形の格好
・握っている掌から身内に浸み透ってゆくようなその冷たさ
・漢文で習った「売柑者之言」の中に書いてあった「鼻を撲つ」という言葉が切れ切れに浮かんでくる(ような匂い)
・すべての善いものすべての美しいものを重量に換算してきた重さ
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この場面を一通り読んだ後に、「梶井基次郎選手権」を実施しました!
「梶井基次郎のように、食べ物を素敵に描写してみよう選手権」の略です。
<ルール>
1)食べ物を一つ決める。できれば自分の好きなもの。
2)梶井基次郎にも負けないくらい、3つの観点(出来る人はそれ以上でもOK)で素敵に描写し、提出。
3)コンテスト。「これは良い!」と思った人を3人選んで投票。
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ロイロノートに提出されたものをお互い自由に見られる設定にして、じっくり選んでもらいました。
その後、投票もロイロで行いました。
各クラス、上位入賞者の書いたものを紹介します。
ショートケーキ
・純白のシルクのベールに身を包んだスポンジ
・その純粋な身をさりげなく飾り立てるルビーのようなイチゴ
・口にいれた瞬間にぱっと花ひらかせ、はかなく散る口どけは最後の一口まで離れがたく、いつの世も我々人間の心を夢物語をみせているかのようにさせる。
抹茶ブラマンジェ
・茶の葉で埋めつくしたように一面に広がる緑色
・羽のように軽く緑色を包み込むようなミルクソース
・悩みも忘れるような口いっぱいに広がる甘さ
アボカド
・悪魔からのプレゼント
・見た目とは反対に中からは鮮やかな草原が広がる。
・単純な味つけで、魔法をかけられたシンデレラのようになる。
・濃厚なシトリンの種。
エクレア
・宝石のようにキラキラと輝くチョコレート
・クリームのクッションに座る季節ごとのフルーツ
・見た目とは裏腹に小口で食べるととび出る白い稲妻
(イラスト付き!)
抹茶ガトーショコラ
・淡く深い緑とオニキスのような黒光りのチョコとのハーモニーを奏でる色合い
・どこか昔を思い出させるふんわりとした食感
・小さな箱にぎゅっと詰め込んだ白いヴェールのようなホワイトチョコクリーム
・口に入れた瞬間あふれだすクランチ
ハンバーグ
・ふっくらと丸く全てを包み込んでいるような体型は、まるで赤子の握りこぶしのようだ。
・まるでナイアガラの滝の下で滝行をしているかの如く、口の中を自由奔放に駆け巡ってゆく肉汁
・こっくりぐつぐつと私の頭の中をあっという間に一人占めしてしまう様々な音色たち
カプレーゼ
・みずみずしい若葉と黄金のベールに包まれたような赤と白の宝石
・芝生の上で白いシャツを着た彼に寄り添い、頬が何度も太陽のように赤くなる彼女を、包み込むような姿
・二人をつなぐ愛が純白なベールでさえぎられているような時間
きのこ
・十人十色のフォルム
・どんな背景でもシンデレラ
・小さな傘から落ちるほほ
梅干し
・その時々の漬け具合によって変化する濃淡の色。
・個々で違うしわの具合。
・しそかハチミツかで変化する独特の味。
・まっ白なコメをひき立たせる味。
・いろいろな料理を美味にできる魔法使い。
・弁当の食材たちを守ってくれるヒーロー。
しそかつおにんにく
・鮮やかなローズが浮かぶ風呂が目に浮かぶよう……
・中には白くつるんと美しい小さな宝石……
・口に含み一噛みした瞬間……はげしい行進曲が流れ、もう誰も止められない、やめられない
(参考画像が送られてきました)
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表現力を磨く、という目的の授業でした。
課題に取り組んでもらっている間、
ぐるるるる、というお腹の音が、あちらこちらから聞こえてきました。